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おもてにでない印刷へのこだわり

公開日 2019.03.01   更新日 2024.01.23

光と影で表現するカレンダー

今回は、光と影が生み出すカレンダーにほんのりと彩を添える。そこにとことんこだわったお話です。このカレンダーの印刷は、不可能を可能にする製本屋さんで有名な篠原紙工さんからご依頼頂き、お手伝いさせて頂きました。クライアント様は、株式会社しるしさん。

一昨年のカレンダーはK-DESIGN AWARD’17でGrand Prizeを受賞。

昨年のカレンダーはDFA Design for Asia Awards 2018でBronze Awardを受賞されています。

蛍光色のかけ合わせ印刷のご相談今回は蛍光インキの掛け合わせ印刷について、数日前サンコースタッフブログの企画である印刷実験室で、「CMYを似たような色の蛍光インキにしてカラー印刷してみる」という事を試してたばかりでした。あまりにもタイミングが良すぎて本当に震えました。

さて、ブログの結果から、蛍光色は通常インキよりも濃度が低い事がわかっていました。そこで、サンコーのベテラン印刷職人の福澤も交えて作戦会議を開き、以下の三つの選択肢が見えてきました。

1、 プロセスマゼンタとイエローに蛍光インキを混ぜてテストする。

2、 イエローだけ蛍光にして他はプロセスインキ

3、 マゼンタだけ蛍光にして他はプロセスインキ

クライアントである株式会社しるしの川崎さんのイメージは、光と影で表現するカレンダー、内側が印刷面で、反射によってうっすらと色が映り、そこに文字が白く映し出されるという仕様です。反射で見えるようにするには、濃さは必要です。そのため、プロセスイエローに蛍光を混ぜ、マゼンタの上に蛍光ピンクを追い刷りし、色の鮮やかさと濃さをアップ。さらに、反射を強くすることを目的でニスも入れることになり、合計5色で印刷することに決定。

どの蛍光色を使うか検討中

テスト色校正1日目

篠原紙工の北川さんと、株式会社しるしのアートディレクター川崎さんと、スタッフの児玉さんもご一緒頂きました。

今回の色校正では以下のテストも行っています。

・紙の違いによる仕上がりの違い。

・印圧を変えることによる仕上がりの違い。

・非印刷部分に、光沢感を増すための透明インキ印刷し反射のテスト。ニスと超光沢メジューム2種でテストしました。

用紙による発色の違いのテスト

風合い、紙の質感、厚さの違う紙でどれだけ雰囲気が変わるかのテスト。平滑度の高い紙の方がインキが沈まずに発色しました。左がエスプリコートで一番平滑な紙で、真ん中と右側は大体同じような風合いです。右側にグレーに見える部分はニス印刷です。印刷しない面にニスを印刷したら、色の反射が強くなるのではないかという仮説を立ててテストをしました。光沢ニスと、超光沢メジュームという透明のインキの2種でテストしました。

印圧による仕上がり違いのテスト

印圧とは、インキをブランケットから紙に印刷するときの圧力です。特にカラーを印刷する場合適正な圧力を与えないと絵柄がつぶれてしまったりかすれてしまったりします。朱肉をつかって紙に判を押す時、力が弱すぎるとかすれて、強すぎるとつぶれてしまうことと同じようなものです。今回使用している紙エコジャパンR/ゆきは、紙に凹凸がある紙です。紙の厚さで測り圧をかけると、凹んだところまでインキが届かず、仕上がりがまだらになります。圧力を普通にかけたものと、強く圧をかけた場合の比較をしました。

印圧0.28 紙の凸部分にインキがのり凹部分にはインキが届きません。

印圧0.15 かなり強力に圧をかけました。凹部分にもインキが付き、きれいに仕上がりました。※ただ圧をかけすぎると、印刷機のブランケットを傷めてしまう場合があるので注意が必要です。

テスト色校正2日目

昨日紙3種類に印刷したものに、マゼンタ版と同じ版で蛍光ピンクを追い刷り。1日目の仕上がりも奇麗だったのですが、追い刷り効果は抜群!!色の強さが増して濃度も上がり、川崎さんにも喜んでいただきました。

追い刷りの色と版、グレーに見えるのはニス印刷

この、光と影で表現するカレンダーは印刷だけでなく、レーザーカットも大事な要素です。両方が組み合わさりはじめてひとつの作品になります。今回の色校正をもとに、文字や模様をレーザーカッターでカットし最終形態のテストが待っています。レーザーカットは篠原紙工さん。私たちにもテスト結果を共有してくれて、サンコーの印刷オペレータも加わって改善方法を考えました。

本番印刷(印刷に立ち会って頂きました。)

テストの結果、デザインを見直していただいたデータで本番の印刷です。今回も2日に分けておこないます。一度色校正でテストをしているので、関わった人全員で「あ、いいかんじだね」という感じで終了。

1日目の印刷終了
印刷終了後、福澤魂が伝わったのかどうか定かではありませんが、さらに鮮やかさが欲しいのでイエローの上に蛍光を追い刷りしてみたい。と川崎さんからご要望がありました。「わかりました。じゃあイエロー版もつくっておきますね。もしイメージが違ったら蛍光ピンクだけで印刷進める事もできますし。」そして2日目の朝結果は、大正解!!濃度も鮮やかさも飛躍的にあがりました!!

最終結果がこちら。

右が1日目の印刷。シアンとマゼンタは通常インキで、イエローは蛍光と混ぜたインキで刷っています。左が蛍光マゼンタと蛍光イエローを追い刷りしたものです。オレンジの鮮やかさが増しました。株式会社しるしさんと、篠原紙工さんには、大変貴重な経験をさせていただきました。そしてサンコーのご提案にもチャレンジさせて頂いたことに感謝しております。

 

そして、私宛にある荷物がとどきました。

株式会社しるしさんからでした。

パッケージも素敵です。

パッケージの中にきれいにならんだ各月のカレンダー。折れたりずれたりしないような工夫が施されています。

 

こちらは4月スタートのカレンダーになっていますので、これから使えるカレンダーです。ホワイトデーのプレゼントや、入学、卒業のお祝いに如何でしょう。興味がある方は株式会社しるしさんへお問い合わせください。

使用用紙:エコジャパンR/ゆき 菊Y146kg

使用インキ:プロセスシアン、プロセスマゼンタ、プロセスイエロー4:蛍光イエロー6混合インキ、DSK750(蛍光ピンク)、蛍光イエロー

 

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