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オフセット印刷を使って箔押しの金属感をだす(サンコー印刷実験室)

公開日 2021.02.22   更新日 2024.11.20

「紙と印刷とラジオ」視聴者の問い合わせから始まりました。

「表紙全面に銅の質感を表現したい。箔押しだと面積が広くなればなるほどコストが高くなって予算にあわない。オフセット印刷で、銅の質感を出せないだろうか?」
ラジオスタッフには、紙専門商社・印刷屋・デザイナー集結しています。この問いで熱くならないわけがありません!紙と印刷とラジオで箔越え宣言しました!

箔押しとオフセット印刷の違い

箔押しは金属の箔を、熱・圧をかけて紙などの素材に転写します。そのため金属特有の輝きや質感が失われないのできれいな鏡面になります。一方印刷は金属粉を混ぜたインキを使いますが、大部分がインキ成分の為遠くから見ると金は黄土色・銀はグレーに見えることもあります。輝きでは、箔押しには勝てないのが現実です。でも今回はその壁を打ち破ることにチャレンジします。

紙5種、5回戦14色印刷

何度も打ち合わせを行どのような組み合わせであれば、印刷で箔押しの質感を超えられるかを考えます。まず、インキについてはより輝度の高いインキ(LR輝)という銘柄のゴールドとピンクゴールドを使うことが決まりました。

紙は銅色が映えそうな紙として、基本形である「コート」、紙自体に光沢がある「エスプリコート」、印刷したところに光沢が出る「エアラス」、パール系のコーティング「新シェルリンN」、さらに色のついた紙でも試したいということで、真っ黒「ケンラン ディープブラック」の5種類を試します。
印刷方法としては、LR輝というインキの下地にどんな色をひいたらより輝きが増すのかを検証します。職人の経験では黒が一番効果が高いと言われていますが、意外な組み合わせを発見できないか、CMYKの4色と、発色を引き立てる、蛍光ピンク、蛍光イエロー、蛍光オレンジ、キンアカの合計8色を下に敷いてみる事にしました。
表面加工ではグロスニス・マットニスの使い分けも試します。さらにおきて破りの銅色ベタ2度刷りにもチャレンジしたい・・・。
こんなやりたいことすべてをA4の1枚で見る事ができるデザインを、かようびデザインの青木佳代さんが作成してくれました。

実験用データ

ニスを含めて14色の印刷です。サンコーの印刷機は4色機なので、全色印刷するには4回印刷機を通す必要があります。しかし、LR輝などの銅インキは定着が悪く、14色を印刷するには5回印刷機を通す必要があります。印刷して乾燥させて翌日に再度印刷して・・・。1週間かけた印刷という壮大な実験が始まります。

下地の印刷。1日目はプロセス4色、2日目は蛍光色と特色

実は紙色が黒いケンランディープブラックで印刷するにはコツがいります。印刷機は紙が曲がっていたり、数枚同時に給紙されるだけで故障してしまう非常にデリケートな機械です。そのためのチェックセンサーがついているのですが、色の濃い紙だとセンサーが反応せず印刷機が作動しません。危険を伴いますが実験の為センサーを切ります。

普段目に触れないような深い場所にセンサーがありました。普段目に触れないような深い場所にセンサーがありました。

 

センサーを切り無事に給紙出来ました!!
ケンランにCMYKと蛍光イエロー、蛍光ピンク、蛍光イエロー、金赤を刷ったもの。独特な表現で実験に立ち会ったメンバーも驚き!

3日、4日目はLR輝ブロンズ、ピンクゴールドの印刷

銅の2度刷りも無事に刷れていましたが、裏を見ると予想通りウラ付きしているものもありましたがこれも実験。

5日目、ニス・マットニスの印刷

ここで、CMYKのカラー印刷をメインとしているLITHRONEから、特色をメインに印刷しているSPICA にチェンジします。LITHRONEは、CMYKを常に同じ胴で印刷をしています。そのため、ローラーなどの部品にどうしてその色が残ってしまい、ニスにその色が移ってしまいます。それに対して、特色を印刷しているSPICAは、ジョブごとに色が違うため毎回洗浄が必要です(だから特色って大変なんです・・・)。そのために、ニスに色が移る心配がないのです。理由はインキ壺に残る色のクセの影響です。印刷機の説明はこちら

5日間にわたる実験結果

果たして箔のような金属感をオフセット印刷で出すことができたのか?どの方法がより銅色に近くなったのか?
箔ほどのツヤ感は出せなかったけれど、色の組み合わせ・紙の組み合わせ次第ではかなり金属っぽさが出せ、オフセットだからこその新しい表現の可能性を感じられた。
箔押しがもつ鏡面仕上げにはなりませんでした。しかし、3年ほど使った10円玉のような金属っぽさは再現することができました。
また、新しい発見もいくつかありました。
発見1 平滑な紙よりも、凹凸のある紙への印刷の方が銅色はきれいにでる!
エアラスはインキが乗った部分にツヤが出る紙であることと、紙の凹凸部分が乱反射するからか、金属感が高く出ていました。それに対してコート紙などの平滑な紙は全体が光ってしまうために、インキ部分の光沢感はあまり目立たなかった。

こちらはコート紙。インキというよりもニスが光って金属感とは違う輝き こちらはエアラスの表面。凹凸が光に反射して金属感が感じられます。

発見2 ケンランディープブラックの仕上がりが秀逸!
紙の色にインキが負けてしまうのではないか?と予想していましたが結果はその逆。紙色の深い黒とのコントラストで銅インキの輝度が引き立っていました。ですがバックに敷いた色による変化は低く、どれも同様の仕上がりになっていました。

発見3 バックにひく色によって変化が大きい!
印刷ではバックに敷く色によって古い10円玉の色になったり新しい10円玉になったり、いろいろな表情を見せ、非常に面白い結果になりました。銅インキの2度刷りに関しては各用紙全てで効果が見られました。

デザイン  合同会社かようびデザイン 青木佳代様(写真右から2番目)
印刷    株式会社サンコー 有薗悦克(写真右端)福澤彦之(写真左から2番目)
用紙提供  平和紙業株式会社 西谷浩太郎様(写真左端)
ケンランディープブラックは富士共和製紙株式会社様にご提供いただきました。ありがとうございます。

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