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和紙をきれいに印刷する方法

公開日 2024.04.05   更新日 2024.04.05

様々な場面で多く使用されている掛け紙。和菓子や贈答品を包み、皆さんも何度も手で触れたことのあると思います。包装紙にさらに1枚紙を掛けることで相手に心配りをする風習は、日本ならではの感じがして私は好きです。だからこそ掛け紙に使う用紙はやっぱり和紙がいいですよね。
サンコーでは和菓子屋さんに懸け紙を販売している墨田区の株式会社エーモン様の印刷のお手伝いをさせて頂いています。ご依頼頂いたきっかけは、和紙の特性を考慮しながら印刷をする会社が減ってきていると相談を頂いたことからです。今回はエーモン様の事例をもとに、和紙をきれいに印刷する方法をご紹介します。

なぜ和紙は刷りづらいのか

洋紙を使用する文化は明治時代以降、欧米から伝わり、すでに100年以上も続いています。そのため印刷機械をはじめインキ、製版技術もすべて洋紙に適合させて作られてきました。和紙は洋紙にはない魅力的な素材感をもっていますが、きれいに大量に印刷するには和紙は適応外だったのかもしれません。オフセット印刷でそんな希少な存在になった和紙を印刷する場合は次のような問題と隣り合わせです。

「紙むけ」や「けば立ち」が目立つ

通常の印刷に近い強さで印圧をかけると和紙の表面の繊維が剥がれブランケットに付着してしまい、印刷不良を起こし、さらに紙は毛羽だった状態になってしまいます。それを避けるために印圧を下げると、今度は色がしっかりと乗らない事態に。印圧の調整がとてもシビアです。

印圧に関するトラブルと回避法についてまとめたブログはこちら

全体の雰囲気がボケる

和紙は非塗工紙なので、インキを吸収しやすく、色や絵柄が紙色の影響を受けて暗くなりがちです。さらに洋紙に比べるとインキがにじみやすいため、シャープに印刷することが苦手です。その結果、全体的にボケた仕上がりになりがちです。
塗工紙、非塗工紙、微塗工紙について説明したブログはこちら

絵柄と和紙の特性を活かす印刷

今回は「水の中を泳ぐ鮎」をイメージした懸け紙。上に書いたような和紙のネガティブな要素を排除しながら、より美しく仕上げるために様々な技術を駆使して印刷しました。

グレーをスミの網点ではなく特色へ変更

本機校正の段階では、通常のプロセスカラー(CMYK)で進めていました。用紙は東雲9号・大柾版・51.5㎏です。

プロセスカラーの場合、グレーはKの網点(またはCMYKの網点)で表現します。その場合、紙には少しのインキしか乗りません。一方特色を使った場合には、薄いグレーのインキを濃度100%で乗せることが出来ます。同じような薄いグレーであっても、ベタで印刷することでしっかりと色を出すことができます。和紙のような色が乗りづらい紙には有効な手段です。

上の2枚目の写真は同じ絵柄ですが、黒とグレーの特色に分けることでこんなにも輪郭がシャープに再現されました。

ベタ面のインキを柔らかくする

水色部分も特色を使っていますが、色校正の段階では紙にしっかりと色が入っておらず、色味が浅くかすれた感じになってしまいました。本来であれば印圧を高めることで、このかすれを消していくのですが、和紙は印圧を強くかけられません。そのために、オロテックスという溶剤を使って、インキを柔らかくすることで紙への浸透を良くします。このインキの柔らかさと印圧の最適値を見つけるのは、職人の経験と勘が全てです。

和紙は洋紙に比べると印刷適正は必ずしも高くありません。でも、和紙特有の良さを活かしながら、絵柄の質感や色味を表現できる方法をサンコーでは印刷職人が考えカタチにします。和紙の印刷にご不安の方、是非ご相談ください。

印刷:株式会社サンコー
販売元:株式会社エーモン

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