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2023.10.06普段から新聞や雑誌、段ボールなどを分別している私たちにとって、環境に優しくエコなイメージがある「古紙」。でも実は、環境への負荷を高めてしまうケースがあることはご存じでしょうか?限られた資源を有効活用することはもちろん重要ですが、“ある点”が偏り過ぎてしまうと逆効果になる恐れも…。今回は、そんな「古紙」にまつわるエピソードと紙のご紹介です。
新聞や雑誌、段ボールなどの古紙は、日本国内において高い回収率が維持されています。回収した古紙を再生することで生まれた紙は「再生紙」と呼ばれ、最近ではSDGs活動の一環から、自治体や企業の名刺やコピー用紙などにも利用されることが増えてきました。
皆さんも「古紙100%」と表示された紙製品を目にしたことはありませんか?このパーセンテージは古紙の配合率を表しているので、いかに再利用されているかがわかりますね。新たな森林資源を使うことなく、リサイクルのみで作られるという点では、とてもエコな紙だといえます。
ただし、「それなら何度でもリサイクルしよう」という簡単な話ではありません。古紙を再利用し続けることで、品質も低下してしまうんです。例えば、「白さ」が重要なコピー用紙をつくる場合。低品質な古紙が材料に多く含まれていると洗浄や漂白をする処理が必要になり、その工程で化学物質やCO2の排出が増加します。「エコな紙を作るはずが環境負荷を高めている」という矛盾が起こってしまうんですね。とはいえ、古紙の配合率が低ければ、そのぶん新たな資源が必要になるので、どちらが良い悪いということではなくバランスを考えることが大切なんです。
そんな古紙の配合バランスをうまくとって作られているのが「Mag-N」です。雑誌古紙を50%以上配合することで、普通紙や従来の再生紙では出せなかった独特の風合いと表情が生まれました。今から約20年前、2000年頃のエコロジーブームに生まれた再生紙なのですが、SDGsの重要性が高まる近年、再び注目を集めています。書籍の表紙や見返し、包装紙、パンフレットなど、幅広く利用されています。
「Mag-N」の材料は半分以上が雑誌古紙で、全体的に若干グレーがかっています。また、ロットによって色合いが異なる点も大きな特徴。その偶然から生まれる“ブレ”は、印刷物というアナログなメディアだからこそ味わえるおもしろさですね。
「Mag-Nだと、今回はどんな色になるかな?」「Mag-Nとして再生される前って、どんな雑誌だったんだろう?」と想いを馳せながら、刷り上がりを楽しみに待つ。通常の印刷物では正確な再現性が求められますが、そんなストーリーを思い描きながら“ブレ”を楽しめる点も人気の理由だと思います。
<「Mag-N」の印刷に関連する記事もぜひご覧ください>
雑誌古紙で出来ているMag-Nのサンプルを印刷しました
もうすぐ仕上がるMag-Nという紙をとことん紹介 | 紙と印刷とラジオ 第66回
森林保護の観点から、古紙の有効利用や紙ゴミの削減が、今まさに世界中で積極的に推進されています。「森林を伐採する紙を作るのは環境破壊だ」とか「再生可能な資源は何度でもくり返し使うべき」という意見も一理ありますが、一部の事実だけを切り取るのではなく、その背景や考えられる選択肢をふまえて一人ひとりが判断できるようになることが、本当の“持続可能性”につながっていくのだと思います。
今回のお話はいかがでしたでしょうか。古紙と環境の関連性について、少しでも理解が深まったのであればとてもうれしく思います。環境に配慮された紙についてもっと知りたい!実際に使ってみたい!という気持ちもSDGsの第一歩です。そんな時は、ぜひ一度私たちサンコーにお声掛けください。最適な紙のご提案から印刷・加工まで、どんな些細なことでも一つひとつお話させていただきます。
カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
毎週火曜日の夜8時から。紙のこと、デザインのこと、印刷のことについて、 ゆるゆると語る30分。
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