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溶ける紙の印刷秘話

公開日 2017.06.08   更新日 2023.05.18
溶ける紙の印刷秘話

「ケッコウなケッカイ―屋外にあるペットボトルの写真展」 安藤次郎さんの写真展で展示されている写真や、販売されている写真集は、水に濡れると「アッ」と言うまに溶けてしまう紙を使っています。

溶ける紙の印刷秘話
この写真展を企画された平和紙業の西谷さんから「この用紙をオフセット印刷で印刷出来ないか」というご相談を頂いたのは、年明けすぐのころ。サンプルを拝見したところ、問題なく刷れてしまうだろうとタカを括っていました。しかし、打合せの後にサンプル紙に水を垂らしてみたところ、「ビックリ!」水滴がアッと言う間に浸み込み、溶け出して穴が開いてしまったのです。

水に溶ける紙×オフセット印刷機

こんなに早く溶けてしまうとなると、印刷できるのか大問題です。と言うのもオフセット印刷機は水とインキの反発を利用しているため、紙は微量ながら水に濡れます。溶ける紙が印刷機の中を通った時、もし水に反応して溶け出してしまったら…。1台1億円以上する印刷機が、壊れてしまうかもしれません。

テストして機械を壊すわけにいかないので、オペレーターと営業マンとで少ない脳みそをひねり、1枚の印刷で消費される使われる水の量を推測しました。1日で減る水の量から、印刷1枚当たりの水の消費量を算出したところ、0.2cc程度。これなら、溶け出すことは無さそうだと判断し、実際にテスト印刷に入りました。

離れない紙

溶ける紙の印刷秘話
印刷に使う水をできる限りしぼって、恐る々テスト印刷のスタートです。そうしたら、スタートからトラブル発生、印刷機に用紙が入っていきません。印刷機は1枚1枚の紙を空気の力で吸い上げて、機械の中にに運んでいきます。しかしこの水に溶ける紙はとても薄く、さらにコシがないため、何枚も重なって印刷機に入ってしまうのです。そうなるとエラーになって機械が止まってしまいます。用紙を吸い上げる空気圧を調整して、1枚づつ流れたかと思うと、今度は2~3枚重なった状態で印刷されてしまいます。どう機械を調整しても、紙を吸い上げる工程がうまくいかず、テストを断念しました。写真の表情から、困った様子を見て頂けることと思います。

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オンデマンド機での印刷に

他に印刷する方法は、オンデマンド印刷機です。これなら水を使わないので溶けてしまう心配はありません。用紙が薄いため相変わらず給紙は難しいですが、エアーで運んでいくオフセット印刷機よりも、ローラーで給紙するオンデマンド印刷機の方が、相性はよさそう。という事で、この写真集は、オンデマンド印刷機(DocuColor 5656 P)で印刷させて頂くことに決めました。

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水に溶ける紙を使った写真集。皆さんの見えないところで、実はこんな試行錯誤がありました。こんなことをしながら出来上がった写真集をぜひ会場でお手に取ってご覧ください。

注)そうそう。関東地方は梅雨入りみたいですね。写真集は、決して濡れた手で触らないでください。溶けて無くなっちゃいますので(笑)

「ケッコウなケッカイ―屋外にあるペットボトルの写真展」開催中です。
会期 : 2017年6月2日(金) ― 7月1日(土)
9:00 ~ 17:00 [土日休館] ※7月1日(土)開館

会場 : 平和紙業株式会社 ペーパーボイス東京
〒104-0033 東京都中央区新川1-22-11
TEL 03-3206-8541
閉会パーティー : 7月1日(土) 17:00 ~ 20:00

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(お気軽にお問い合わせください|平日 10:00~18:00)

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