デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.06先週に引き続き新たに印刷・紙業界に入られた人に向けた基礎編。今回は印刷の基本について語りました。
印刷機の種類は(数え方にもよりますが)ざっと数えて12種類あります。そのうち、紙に印刷する印刷機について語りました。
印刷の歴史はグーテンベルクがぶどうを絞る機械を改造して開発した活版印刷機から始まりました。活版印刷は凸版印刷の一種で、版に圧を掛けて紙に転写するシンプルな構造が特徴です。オフセット印刷機やオンデマンド印刷機など新しい機械に主役の座を奪われましたが、名刺印刷などで根強い人気があります。
活版印刷機は凸版を使い、紙に直接印刷をします。それに対して、水に濡れた版のインキをはじく・弾かないという特性を使いインキをコントロールする平版を使うこと。版から紙に直接印刷せず、ブランケットを経由させること。この2つのイノベーションによって生まれたオフセット印刷機は、網点を使った繊細な表現が可能で、カラー印刷を一般的なものにしました。さらに近年では紫外線を使ってインキを強制的に乾燥させることで高い生産性を実現するUVオフセット印刷機が生まています。
平版印刷でブランケットを経由するという意味ではオフセット印刷機の一種ですが、大ロットに適した仕組みになっていることが特徴です。一般的なオフセット印刷機に比べて、版の耐久性が高く、紙は平判ではなくロール紙を使います。さらに、乾燥・断裁・製本・梱包までインラインで完結させることができたりもします。
非常に高額な機械のため、24時間体制で稼働させている工場がほとんど。入稿が遅れると、次の空き時間まで仕事が入らない事もあるので、注意が必要です。
オフセット印刷機の一種ですが、紙製の簡易な版を使うことで低コストで印刷することができます。会議資料など、ロットが小さく色数が少ない印刷物で活用されてきました。
オフィスに置かれたカラーコピーと同じようにトナー式の印刷機ですが、紙の厚さ・種類への対応幅や、表裏の見当精度などが異なります。さらに上位機種になるとホワイトや箔、ニス加工などができるものも。版を作らないため1枚から出力でき、さらにデジタルなので1枚ずつ違う絵柄を出力できるため、帳合工程がいらず製本工程も省力化できる。そのような破壊的なイノベーションのため、それまで小ロット印刷を担っていた軽オフや活版印刷が壊滅的な打撃を受けました。
家庭用のインクジェット機の大型版で、大判のポスターなどを出力するために作られています。しかし印刷会社にあるインクジェット印刷機は、簡易校正用に使うためにカラーマネジメントの仕組みが汎用品と異なり、印刷機と同じ仕上がりになるように調整がされています。そのソフトウエアが高い!
最近広まってきた印刷機です。版を作らないためインクジェット印刷機のようでもありますが、オフセット印刷機に肉薄する生産性を兼ね備えます。さらに、1枚ずつ異なったデータから印刷ができ、色の再現性はオフセットよりも高いケースもあります。現段階では機械の値段が高かったり、用紙やサイズの選択に制限があったりしますが、これからの中心となる印刷機であることは間違えありません。
凸版印刷の一種で段ボールや軟包装の印刷に使われています。オフセット印刷機の中では、紙が蛇行するため、硬い段ボールの印刷には適しません。フレキソ印刷機は原反が平らな状態で搬送され、湾曲したゴムの版で印刷するため、段ボールへの印刷で使われてきました。また、ペットボトルに貼られているフィルムも、海外ではフレキソ印刷機が主流になっているそうです。オフセットと比較すると網点が大きいため、仕上がりは荒め、版代が高いため大ロット向きという特徴があります。
溝になった部分にインキが溜まるという凹版を使った印刷機です。かつては高品質な印刷機として、雑誌のカラーページで使われており、グラビアの語源にもなりました。いまでは雑誌のカラーページはほぼオフセット印刷機に置き換えられ、ペットボトルの軟包装などの紙以外への印刷が中心となっています。
紙以外への印刷を得意とするUVインクジェット印刷機、シルクスクリーン印刷機、パッド印刷機なども話したかったのですが、時間が足りなくなってしまったのでまたの機会に。
カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
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