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特色掛け合わせの名刺印刷

公開日 2016.05.14   更新日 2024.01.23
特色掛け合わせ

特色は普通はそのまま印刷します。しかし、今回は特色を掛け合わせて印刷するという特殊な印刷を行いました。きっかけは、グラフィックデザイナーの一ノ瀬雄太さんから頂いた、名刺の印刷についてのご相談です。入稿されたデザインはこのようなものです。

特色掛け合わせ名刺のデザインデータ

4つの胴で5色を印刷する!?

このデザインは、赤・緑・黄・青・紫の5色で構成されています。通常、このような印刷物の場合は、CMYKの4色のインキを使って再現をします。しかし、CMYKの印刷では緑や紫が画面で見ているような明るさでは再現出来ません。これは、モニター画面(RGB)と、印刷インキ(CMYK)の性質の違いによるもので、仕方ないことです。
CMYKで色の鮮やかさが表現できない場合、蛍光インキを使って狙った色を作り出し印刷をします。このような表現を『特色』といいます。特色を使えば、かなりイメージした色に近づけることができます。

しかし、そこで問題が発生しました。このデザインは5色の色を使っていますが、印刷機には4つしか胴がついていないので、同時に印刷できる色数は4色です。5色を印刷するには2回印刷機を通す必要があり、コストが大幅にアップしてしまいます。名刺は大量に配布するために、できる限り安く仕上げたい。そこで、最大で4色のインキを使いながら、出来る限り狙った色に近づけていく印刷ができないかを探る事になりました。幸いなことに、紫は赤と青の中間色であり、緑は青と黄色の中間色です。どれか1色を2つのインキの掛け合わせで表現できれば、4色のインキで5色を表現できるかもしれません。

最適な特色の組み合わせを考える

特色掛け合わせ
印刷職人も入ってデザイナーさんと打ち合わせを行います。カラーチャートを見ながら、画面でイメージしている色が、印刷ではDICの何番に相当するか確認していきます。打ち合わせを進めていくと、どの色を重視するかによって、4通りのインキの組み合わせ方があることがわかってきました。

全体的にバランス良く表現しようとしたら、赤(M100/黄60)、紫(C80/M100)、黄(Y+蛍光Y)、青(C75)、緑(特色)と言う組み合わせが考えられます。CMは通常の色。Yは蛍光黄色を混ぜて彩度をあげ、緑だけは特色を練ります。

紫を鮮やかに出そうと思ったら、赤(特色)、紫(特色)、黄(Y+蛍光Y)、青(原色藍80)、緑(原色藍+Y)と言う組み合わせになります。この場合、紫・赤は狙った通りの色になりますが、緑が狙った色にならない可能性が高くなります。

同様に、緑をメインにした場合、青をメインにした場合の組み合わせも出してみました。緑をメインにすると紫が犠牲になり、青をメインにした場合も紫に影響がでます。

特色掛け合わせどの色をメインにするかによって異なるインキの組み合わせ

緑の発色を重視する

最終的に緑の発色を最優先に、全体のバランスを重視したパターン(ホワイトボードの一番左)で行くことが決まり、一ノ瀬さんにも立ち会って頂いて印刷工程に入ります。

特色掛け合わせ刷り上がりを見ながら調整していきます

インキを混ぜ合わせる調肉作業は職人の経験と勘が必要

黄色に蛍光黄色を混ぜて色を作り、黄色の発色を良くしていきます。そうすると、Mと組み合わせた赤(オレンジに近い明るい赤)では、蛍光黄色が入っているため黄色の濃度が弱くなってしまいます。そんな状況を見ながら、最適なインキの調合と印刷機でインキの供給量のバランスを調整し、濃度を一ノ瀬さんのイメージにあわせていきます。

特色掛け合わせ
微調整をしながら数回試し刷りをします

このような試行錯誤を経て、印刷で表現する事が難しい明るい5色の色を、4色のインキで表現する事ができました。一ノ瀬さん、いい笑顔です。

特色掛け合わせ
このような取り組みは、サンコーとしても初めてのことで、私たちにとっても色々と学びがありました。サンコーはお客様の「おもいをカタチにする」ことが自分達の仕事だと考えています。これからも、「こんな色を表現したい」 そのようなおもいに、一丸となってお応えしていきたいと思います。

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