デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.06放送する部屋が広くなり、声を張ろうと一生懸命になるとなぜか目を大きく見開いてしまう西谷さんと、先日お伺いしたシナノ紙工さんの工場見学を振り返りながら、段ボールについて掘り下げました。
その前にリスナーさんから頂いた質問から。
「原因は紙にあります」と西谷さんは断言します。紙の原料であるパルプには機械パルプと化学パルプとの2種類があります。木材をミキサーで粉砕しただけで硫化ナトリウムなどの化学処理を通じて劣化の原因となるリグニンを除去していない機械パルプで作られた紙は、酸化しやすく紫外線で茶色に変化しやすいとのこと。ざらざらした手ざわりの紙は、機械パルプが多く含まれており劣化しやすいそうです。
もう1つの劣化の原因が、紙が酸性に傾くこと。インキのにじみを止める薬剤が酸性のため、印刷用途に最適化した紙は劣化の原因を抱えています。逆に、手漉きのこうぞ100%の和紙は、その薬剤が使われていない。大昔の書物が残っているのはそれが理由なんですね。
外装段ボール、内装段ボール、美粧段ボール、と3種類の段ボールがありますが、オフセット印刷をした紙を貼り合わせて作られる美粧段ボールを手掛けるシナノ紙工さんに、ディレクターK氏や大学の授業を休講にして参加したデザイナーさんなどと見学に伺いました。紙加工に対する変態ばかりが集まった見学で、熱量の高い時間でした。
回転ずしのようなトレーにのって保管されている段ボールの原紙。段ボールは茶色の紙なので、新品のパルプからつくられるクラフト紙が原材かと思っていましたが、波の部分は再生紙の割合が100%に近いそうです。両サイドについてもクラフト紙だけでなく、古紙も多くつかわれているそうです。
一般的な合紙でも紙の吸湿率の違いなどで反ってしまうことがほとんど。しかしシナノ紙工さんの工場では合紙した後にほとんど反りが起きていません。合紙する紙の特性を理解し水分を調整することで反らない紙を作っているそうです。
美粧段ボールの貼り合わせはとても繊細な世界でした。
美粧段ボールでは型を必要としますが、外装段ボールでは溝を切るだけで作ることが多く、抜型を作らないことが一般的ということに驚かされました。
抜いたあとの余分な部分を剥がす作業を「むしり」と言います。手でやるケースが多いですが、シナノ紙工さんではエアハンマーという道具を使って一気に飛ばしてしまいます。簡単そうに見えるこの作業ですが、もしミスをしたらそれまでの工程が全て無駄になってしまうので責任重大。熟練が必要な仕事とのことです。
むしられた紙はそのまま古紙の回収ラインに流れていきます。細かく粉砕され、隣の建物までパイプで送られ、針金でくくられて古紙回収に回っていきます。段ボール工場だけでなく製紙工場なども廃材をリサイクルする仕組みが以前から出来上がっています。
外装段ボールの工場ではロットも大きく、梱包作業をロボットアームが行うなど、自動化が進んでいます。一方で美粧段ボールでは製造工程が多岐にわたり、繊細な調整が必要な工程も多いため、職人の手が入る場所が多くあります。
オフセット印刷した紙を貼り合わせることにこだわらず、ファンシーペーパーを使った美粧段ボールが商品化出来たら面白いという西谷さん。段ボールについての話題も尽きません。本当はダンボールギーニの話題にも触れたかった…。
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カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
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