デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.06学校で配布されるわら半紙のにおいが好きだったというリスナーさんからのお便りから、紙や印刷のにおいについて語りました。ちなみにオープニングでご紹介した、共進ペイパー&パッケージのハコプレはこちらから。
最近の学校ではコピー用紙にレーザープリンターで印刷しているために、においはほとんどしませんが、私が小学生の頃はわら半紙にリソグラフで印刷したプリントが配られていました。わら半紙は紙としてはほとんどにおいがないため、あのにおいは乾く前のリソグラフのインクの匂いだったのかもしれません。
紙・印刷物のにおいで思い浮かぶのは、包装紙や、書店のにおいですが、書店でも新刊を扱っている書店と古本屋や図書館ではにおいが違います。紙にはほとんどにおいが無いため、包装紙や新刊の場合には印刷のインキや製本の糊などのにおいだと思われますが、それらが長い時間をかけて乾燥したあとのあのにおいは一体どこから?ひょっとすると、本が置かれていた生活のにおいを吸い込んでいるのかもしれません。だとしたら、日本の古本屋と海外の古本屋は違うにおいがするのでしょうか?
印刷職人は日々においの強い職場にいるため、自分たちは「鼻がバカになってる」と笑いますが、オフセット印刷工場のにおいは、油性機とUV機で全く異なります。油性機の工場では揮発性の溶剤の匂いがしますが、UV機の工場ではプラスチックというかゴムというか独特の匂いがします。それより強烈なのはシルバーのインキ。言語化が難しいのですが、とにかく臭い!また、工場で強いにおいがするのは洗浄用の溶剤です。そのため、洗浄する機会が多い特色や平台校正機などは石油の匂いが強くします。
紙だけで嗅いでみると、想像していた以上ににおいを感じませんが、かすかに感じるにおいは、西谷さんによるとパルプと填料(白色度、不透明度を出すための薬品)のにおいとのこと。製紙工場が集まる新富士駅を降りると、町全体がこのにおいがして、さらに製紙工場に到着すると、濃縮された紙のにおいがするようです。一度嗅ぎに行ってみたいです。
最近はSDGsの観点から、事業で出た廃材などを紙に混抄する相談が増えているそうです。ただ、紙はにおいを吸着する性質があるため、においのある素材を混抄すると倉庫での保管や流通などあらゆる場面で他の紙ににおいを移してしまいます。そのためにおいの強い素材の混抄はできないそうです。
リスナーさんからのおたよりがきっかけで、普段とはちょっと違う角度から紙や印刷について触れてみました。こんなテーマで取り上げて欲しい。というご希望があれば、サイトの問合せフォームや、紙と印刷とラジオのTwitterのDMなどからお寄せください。
カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
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