デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.062020年12月30日、co-lab墨田亀沢にて開催された『伝わるデザインの授業 一生使える8つの力が身につく』(著書 武田英志氏)発売記念のオンライントークイベント。
グラフィックデザイン事務所である株式会社hooop代表の武田英志さんとco-lab墨田亀沢のコミュニティファシリテーター有薗が、お酒を片手にデザイナーとビジネスパーソンの両方の視点から「伝わるデザインとは何か?」をカジュアルにトークしました。前編では、武田さんが出版に至った経緯やデザインへの思いをお聞きした内容、そしてお悩み相談コーナーの前半をレポートしました。今回は後編として、盛り上がったお悩み相談コーナーの後半時間の様子をレポートします。
本書は、全部で8章に分かれています。デザイン力を身に着けることで、できることや役立つポイントを良い例や悪い例などの事例を織り交ぜながら、わかりやすく解説してくれる実践的にデザインを学べる内容になっています。
デザインに関係するお悩みを、解決に導くヒントをお届けするコーナーは、イベントの後半になるにつれてどんどん盛り上がっていきました。前編のレポートでは、3つ目までご紹介しましたが、これからご紹介する5つのお悩みも「確かに」と納得させられるものばかりでした。
4つ目のお悩みは、文字数がオーバーした場合にどうするのかという問題。これに対しては、「文章の役割を考え、いくつかの解決策をとる」と武田さんはいいます。
有薗:これはライターに何とかしてもらうんじゃなくて?(笑)
武田:デザインの仕事をしていると、よくありますよ(笑)。どういう文章なのか役割を考えることだと思います。見た目優先のキャッチコピーのようなものなのか、商品名など短くできない客観的な事実を記載するものなのかによって解決策は異なります。
具体的な解決策は、大きく5つ。
1)テキストを減らす。
2)行数を増やしたりレイアウトを変えてスペースを確保する。
3)字間をつめる。
4)文字を小さくして収める。
5)文字を変形させ(長体をかけて)おさめる。
武田:上位にあるものほど、視覚的に違和感を感じないスマートな解決方法です。
有薗:1についていえば、言葉のデザイナーであるライターにお願いすることで、ぐっと洗練された言葉になることもありますよね。
武田:確かにそうですね。2から下はデザイナー側でできることになります。
有薗:発注側からすると1行増えることで何が変わると思いがちだけど、全体のバランスが崩れることもありますよね。
武田:2が可能であれば、それがもっとも自然なやり方ですが、さまざまな制約でそれが難しいこともあります。やりすぎずにすむのであれば、3か4がファーストチョイスであることも多いです。ただ、文字を変形させておさめようとするのはデザイン的にも美しくなく、文字に対する愛が足りないんじゃないかなと思います。「君のことは好きだけど、僕に合わせて」といっているような感じ(笑)。
有薗:だいぶひどい男だ(笑)。
武田:フォントはそもそも幅100%で使用することで美しく見えるように設計されているので、できるだけ変形させないでいきたいと思っていますね。
5つ目は、パワポの資料のダサさをどう解決したらよいかというお悩み。
これについては、「装飾をあまり使わず余白をコントロールしてみましょう」という答え。
武田:仕事でパワポでデザインすることってあまりないので、細かな機能については詳しくないですが、デザイナー視点でポイントを3つ挙げました。ダサさはどこからくるのか……?
・なんとなく初期設定の機能のまま使っているから。
・1ページに入れるメッセージを1つに絞るのならば装飾はあまりいらない。
・もっとも伝えたいことの周囲には十分すぎるくらい余白をとろう。
有薗:初期設定のまま使うのは、確かにだめですよね。
武田:デザイナーは線の太さや角丸を細かく調整して、ディテールをつめていい感じにしています。でもみなさんが細かな調整をするのは手間がかかる。なので、何かをプラスするのではなく、マイナスをして焦点を絞っていくのがいいやり方だと思います。
有薗:初期設定のところは、デザイナーさんに相談するのもいいと思います。タイトルのフォント、文字の大きさ、色、本文の文字サイズとか、そういう設定を相談してつくるのも一つの方法ですね。
武田:そうですね。もう1つ、最も伝えたいメッセージの周りに余白をつくるということも大切です。
有薗:余計な要素を落として、メッセージを絞りデザインも絞っていく。
武田:ありのままで美しいものはそのままでいいけど、何かしら考えて工夫してあげる必要がある。デザインの場合は、デザインの場合は間引いて、焦点を明らかにしていく、「引き算の美学」ですね。
有薗:「引き算の美学」。かっこいい言葉ですね。
続いて、6つ目はデザイナーのお悩みから。シンプルと淋しいの葛藤問題。
武田さんは、「手書きは一つの解決策」といいます。
武田:僕も常に悩んでいることで(笑)。いろんな解決策はあると思いますが、手書きはよく活用する方法です。
とある美容師さんの著書で、トビラ部分に文字しかないデザインでかわいさを表現するために、文字の一部を手書きにしました。それによって全体が柔らかいトーンになりました。手書きの効果は、違和感にあります。デジタルの文字のところに手書きが入ることで、読み手の違和感になり、それがアクセントになるんです。
資料作成においては、手書きで一か所を丸で囲むとかアンダーラインを引くということだけでもいいと思います。
7つ目のお悩みは、グラフィックデザイナーという仕事をどう説明するか問題。
これは武田さんもよく質問されるそうで、料理人に例えて説明をするのだそうです。
武田:両親にもよく聞かれるし、「それで食べていけるの?」ともいわれます(笑)。そんなときには料理人に例えます。素材に対して、配合や料理の仕方で一皿の完成された料理をつくるのが料理人であり、デザイナーはその役割ではないかと思っています。
料理人は、食べた人が笑顔になるとか素敵な時間をつくるということを考えながらつくります。デザインであれば、生活の潤いになるとか、人と人のコミュニケーションにつながるなど、役に立つのが本当の目的だと思います。アーティストではないので、作品自体ではなくその先にあることに対してつくるのが目的なんです。
なるほど。今後は、武田さんやデザイナーのことを料理人に例えて説明しようと思います(笑)。
最後のお悩みは、ビジネスサイドの方によるデザインをどう判断するか問題。これには、「センスや感覚ではなくロジックで共有できることも多いはず」と武田さんはいいます。
武田:デザイナーは説明が下手なところがあります。「すっきりした見た目にしたいので、シンプルにしました」と説明したり。
有薗:言っていること一緒やん!って感じですね(笑)。
武田:意図、理由があってデザインされていることをきちんと説明ができるといいなと思います。
有薗:一方で、ビジネスパーソン側も、自分にはデザインがわからないと感じることを諦めてしまい、「いい感じにつくってよ」みたいなことをいう人もいますよね。すべての人は、見て何かを感じ取る力は持っているはず。なのに、それをしようとしない。ビジネスの世界では感覚ではなく、客観性や合理性に基づいて判断するように常々叩き込まれる弊害もあると思います。
武田:感覚的に見えることも、裏にはロジックがあるということが共有できれば、もっとわかりやすくなり、デザイナーとビジネスパーソンが同じ方向を向くことができると思います。感覚的な話だけだと、担当者の好き嫌いが判断基準になってしまう。
有薗:確かにデザインの判断において、自分が好きかどうかで決めてしまう人が多いかもしれません。誰に見せて、その人にどうなってほしいのかというところで判断をする必要があります。
お悩み相談コーナーが終わり、最後は、2021年の抱負を伝え合って締めくくり。
武田:コロナ禍による混乱は今後もしばらく続くでしょう。その中で、よりデザイナーとビジネスパーソンの関わりを発展させたいと考えています。お互いがよりわかり合える術を考えていきたいし、発信をしていきたい。
有薗:オンラインでやり取りが完結する時代になることで、情報を伝える手段としての紙の価値は低下していくのではないかと考えています。こうした時代だからこそ、改めて紙の価値を考えていきたいと思います。武田さんがデザイン側からビジネス側に通訳をしているように、私はビジネス側からデザインを翻訳できるようにして、デザイナーやクライアントが良い関係になっていくようにしたいですね。
1時間半のオンラインイベントはあっという間でした。途中、パソコンが落ちて視聴できなくなるというハプニングもありましたが、「伝わるデザインとは?」をデザイナーとビジネスパーソンのそれぞれの視点から考える濃厚な時間となりました。
デザインの背景にあるロジックを知ることで、デザイナーもビジネスパーソンもより仕事の幅が広っていくと思います。詳しくは武田さんの著書『伝わるデザインの授業 一生使える8つの力が身につく』を熟読してみてくださいね!
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