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【印刷実験室】印刷ゴーストの原因と対策

公開日 2022.06.17   更新日 2024.11.20

ゴーストとは?

印刷物に、デザイン上存在しない濃淡が生じる現象です。実はゴーストが起こりそうなデザインはとても多いのですが、皆様の目に触れる機会が少ないのは、印刷会社が人知れずに撃退したり、目立たなくしているからかもしれません。そこで、どの様な条件だとゴーストが起こりやすいのか。気を付けなければならない組み合わせを実験しました。

ゴーストが起こりやすいデザインを作る。

ゴーストは、ベタに白マドや白抜きがあるデザインに起きがち。いつもはゴーストを減らす為に日々戦っている印刷職人、プリンティングディレクター、DTP職人が集まり、苦い経験を持ち寄って出来上がったデザインがこちら

【印刷実験室】ゴーストデザイン

一番ゴーストが出やすいと思われる白マドと白ストライプに加えて、ロゴとテキストを配置しました。さらに、白い部分の長さを変えることで、ゴーストの出方にどのような変化があるかも検証します。

ゴーストが起こりやすい条件とは?

わざわざゴーストを出すという闇落ちデザインは完成しました。あとはどのような印刷条件だとゴーストが起きやすいのか。刷り色、紙、濃度、水量、速度を変えて印刷してみることで、効果的なゴースト対策を見つけ出していきます。

刷り色

プロセス4色のうちBL(スミ)、C(シアン)、M(マゼンタ)で印刷。
実験している時はC(シアン)が一番強く出ていましたが、乾いた後に見てみると、どの色も甲乙つけがたい仕上がりになりました。

【印刷実験室】ゴーストBLノーマル印刷 【印刷実験室】ゴーストCノーマル印刷 【印刷実験室】ゴーストMノーマル印刷

コート紙、マットコート紙、上質紙を同条件で印刷。
コート紙、マットコート紙とも大体同じ様な目立ち方でした。上質紙は非塗工紙なので表面の凹凸による影響からか、ゴーストは弱く見えます。

【印刷実験室】ゴーストBLコート紙 【印刷実験室】ゴーストBLマット紙 【印刷実験室】ゴーストBL上質紙

濃度

印刷時のインキ濃度を変えて印刷。濃く刷るとゴーストは弱く、薄く刷るとゴーストは強くでました。

【印刷実験室】ゴーストM濃度高 【印刷実験室】ゴーストM濃度通常 【印刷実験室】ゴーストM濃度低

水量

版に供給する水の量を変えて印刷。
水の量が多いとゴーストは強く、水の量が少なくなるとゴーストは弱まりました。

【印刷実験室】ゴーストC水量多 【印刷実験室】ゴーストC水量通常 【印刷実験室】ゴーストC水量少

速度

サンコーの印刷機は、通常10,000枚/時で印刷しています。それを8,000枚/時まで遅めた場合と、13,000枚/時まで早めた場合で検証しました。
本当はもっと変化させたいのですが、やり過ぎると機械のバランスが狂ってしまい印刷そのものが成立しなくなるので、出来る範囲で最大限速度を変えてみましたが大きな変化はありませんでした。

【印刷実験室】ゴーストが出て安心する闇落ち職人たちゴーストが出て安心する闇落ち職人たち

キングオブゴーストを召喚する!?

実験の結果ゴーストが強くでる条件が分かったので、もっともゴーストが出るキングオブゴーストの条件で印刷してみました。
紙:コート紙かマットコート紙
刷り色:実験時に一番ゴーストが出ていたので、C(シアン)を選びました。
印刷濃度:薄め
水量:多め
速度:通常
その結果がこちら。白窓部分や、長めのストライプの右側にゴーストが強くでています。本の表紙などでこの状態になったら・・・。

【印刷実験室】ゴーストC薄くて水が多い印刷

ゴースト対策あれこれ

では、どうしたらゴーストを防げるのでしょうか?デザインによって有効な方法はかわりますが、ゴースト対策の例をいくつかご紹介します。

「捨てオビ」「捨てベタ」

断裁・製本前の印刷物に、仕上がりの外側に横一線のベタが入っていたり、一部分だけベタが入っている事があります。これはゴースト対策のひとつ「捨てベタ」「捨てオビ」と呼ばれている方法で、インキの供給量をなるべく均等にする技です。

【印刷実験室】ゴースト超ざっくりゴーストのメカニズム

インキの量を100、絵柄を10マスで図をつくりました。どの場所もインキを100使い切らなければなりません。白が多ければ多いほど残り絵柄が濃くなります(左図)そこで絵柄の外側、紙の余っている部分にインキの逃げ道を作ってあげるとインキが均等に近づきます(右図赤丸内が捨てオビです。)

印刷方向を変える

印刷のインキの流れは一方向です。絵柄の向きを変える事でゴースト発生を軽減することもできます。ただ、面付がかわることで紙の枚数が多く必要になります。

(番外編)デジタル印刷機を使う

デジタル印刷機は紙の上からインキを吹き付ける方式のためゴーストが出ないようです。実験が出来ていない為、ご参考まで。

まとめ

ゴーストは印刷会社が退治するものですが、印刷条件やデザインによっては完全に退治は難しいものもあります。デザインされるときに、今回の実験結果をちょっと思い出してもらえたら嬉しいです。特に参考書などの本の表紙でありがちですよね。濃い背景に白い窓や枠・・・。

ゴーストを撃退したブログはこちら⇒【印刷実験室】印刷ゴーストを撃退します

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