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世界でたった1枚の名刺 後編

2016.06.13

世界でたった1枚の名刺
1枚の原稿を、早く、大量に、精度高く複製するために、オフセット印刷は発展してきました。そのオフセット印刷を使って、『世界でたった1枚の名刺』を作れないだろうか。そんな試みをしました。前編では印刷段階での取組をご紹介しましたが、後半は断裁段階での取組みです。

断裁での取り組み しっかりと乾かす

印刷が終わった200枚の原稿を、2日間かけて自然乾燥させました。通常は、一晩置いておけばインキは乾燥します。しかし、このデザインでは、CMYKすべての色が、濃度100%で作られいます。そのため、4つの色が重なる場所は、濃度400%という通常では指定しないインキ濃度となっています。印刷の翌日に断裁の予定だったのですが、インキの乾きが悪く、このままだと断裁機のプレスで裏写りついてしまう可能性が高かったので、1日余計に乾燥時間をとり、いよいよ断裁工程のスタートです。

向きを入れ替える

今回断裁する印刷物は菊半裁(A2よりも少し大きい)サイズで約40枚程度です。その40枚を、濃度の薄いものから濃いものに順番にならべ、次に1枚ずつ向きを互い違いにしました。下の写真を見ると、色玉(紙の下部にある四角い模様)がついている紙と、ついていない紙がありますが、ついていない紙は向きが反対になっています。

世界でたった1枚の名刺
向きを入れ替えた紙を整えます。通常の印刷では、基準となる紙の角を決め、そこに合わせて表裏の印刷を合わせ、断裁時もその角を基準に断裁を行います。この時点で、既に紙が互い違いになっているため、その基準となる角は存在しませんが、いったん機械を使って紙を整えます。

世界でたった1枚の名刺
振動によって紙を揃える機械を体験してもらいました

3D断裁

ここからが、断裁で特にこだわったところです。一度しっかりと整えた紙を、斜めに広げて行きます。このように斜めに広げることで、全ての紙が少しずつずれた状態になります。

世界でたった1枚の名刺
紙の束を斜めにずらしたところ

そのまま断裁をします。普段ならば、断裁機の奥の壁にしっかりと紙を押し当て、ずれが起きないように断裁するのですが、斜めになった紙をそのままカットします。

世界でたった1枚の名刺
斜めのままカット

同じ工程を、もう一辺でも実施します。そうすると、残った二辺はこんな感じになります。この状態を見て、「3D断裁」と名付けました。

世界でたった1枚の名刺
3Dカット!

この状態から、斜めになっている二辺を裁ち落として、四角い紙の束にしていきます。もうこの時点で、全ての紙は異なった場所で断裁されているため、同じ絵柄は一つもありません。その証拠に下の写真の断面を見てください。普通なら、ここ縦は同じ絵柄が並びますが、既に複雑な形にずれています。

世界でたった1枚の名刺
断面に出てくる絵柄が揃っていません。

そこから名刺サイズに切り分けて行くと、全て違う絵柄の名刺が出来上がっていきます。

世界でたった1枚の名刺

トンボに見当ずれにプレス跡

皆さんが普段目にする印刷物は、トンボと呼ばれる目印で断裁された内側が使われています。そのため、トンボの外側に書かれている、ドキュメント名や色玉などの情報は目にする機会は少ないと思います。今回、世界に1枚だけの、会話のきっかけをなる名刺を目指したので、そのような情報もあえて残した状態で断裁しました。なので、数十枚に1枚は、トンボや色玉など入った紙が混ざっています。更に、その時に楽しんでもらえるように、印刷時に見当を大幅にずらして印刷しました。なので、下の写真のような仕上がりになっています。

世界でたった1枚の名刺
ずれまくった見当

普段は、このずれが無くなるように、ルーペで確認をしながら見当を調整をして行きますが、今回は機械の限界まで見当をずらしてみました。そうしたら、子供の頃に見た青と赤の立体写真を、眼鏡無しで見ているような不思議な感じに仕上がりました。また断裁機では歯が入る前に紙がずれないように強い圧力を掛けます。そのため積み上げた紙の、上の方はその圧力で凸凹がついてしまい、使いものにならなくなってしまいます。しかし、その凸凹もデザインの一部と考え、これも数十枚に1枚の割合で入っています。

世界でたった1枚の名刺
断裁機でプレスされた紙

デザイナーのアイディアや感性と、サンコーの技術がぶつかり合い、世界でたった1枚の名刺が完成しました。人と人との出会いが一期一会であるように、この名刺との出会いもまた一期一会です。この名刺をきっかけに、新たな会話が生まれ、ご縁が広がって行ってくれたら印刷業に携わる私たちにとってこれほど嬉しいことはありません。

商品名:インクデザイン様名刺
クライアント:インクデザイン様
用紙:アラベールスノーホワイト

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