トップ何気なく手に取っているものに、汗と涙がつまっているかも

何気なく手に取っているものに、汗と涙がつまっているかも

2018.01.18

一見、題と関係ないようですが、最後まで読んでいただければわかると思います。
同業の方なら特に(笑)

「4色or6色?」

「その人に合ったデザインをしていく。頼まれたことをハンサムにして世に出していく。そんな散髪屋のようになれれば。」というコンセプトを持ったデザイン会社、ハンサム株式会社様から、「表面にはカレンダー、裏面にはクライアント様のイメージをデザインし、ポスターとしても貼っていただけるような作品にしたい。」とのご相談をいただきました。
頂いたデザイン案のそれぞれのパーツは、クライアントさんの社員を表していて、色は個性を表現しています。それぞれがビビットな色なので、通常のCMYKのカラー4色で印刷すると、コントラストが弱くなってしまうため、特色6色。サイズはB2サイズを想定していらっしゃいます。

「クリアするべき事」

この印刷を実施するにあたって、クリアすべき課題が大きく4つありました。
1、インキの乾燥と版ずれ
通常の4色印刷は、機械に一回通すことで全色の印刷ができます。特色の6色の場合には、通常の印刷機には4胴までしかないため、機械を2回通す必要があります。2回目の印刷までにインキを乾かすのですが、その時間を置きすぎると、紙が伸縮したりカールしたりしてしまいます。その結果、1回目と2回目の絵柄にずれが出て、色の境目に白地が出たりしてしまう可能性があります。それを避けるために、インクが乾かないうちに続けて印刷すると、今度はインキがこすれたりしてしまいます。
2、表裏紙質の違う紙。
今回使うのは「エスプリFP」という紙です。ポスター面とカレンダー面で紙質が違います。その結果、通常の紙よりも印刷時のカールが起こりやすいという特徴があり、版ずれがより起きやすくなります。
3、印刷面のインキ量
片面のほぼ全面に色が入っている(全面ベタ)ため、1、2、の現象が顕著に表れやすく、さらに版ずれがとても目立ちます。
4、サイズの問題
サンコーの印刷機はA2よりも若干大きい菊半裁サイズの印刷機でB2サイズは印刷できません。なぜこのサイズなのかも理由があるのですが、これはまたの機会に。

「全職人の英知を集める」

前述の4つの課題を1つずつ解消していきます。まず、サイズについては、機械の問題をご理解いただき、サイズ変更を快諾頂きましたので、1~3の課題に取り組みます。まずは本番と同じ環境で色校正を出して状況を確認します。やはり1回目の印刷と2回目の印刷の間に紙の伸縮がおこり、髪の毛一本ほどのずれがでてきました。

緑と青の間にずれが生じて白がでてしまっています。

ハンサムさんに現状の報告と、対処法の打ち合わせを行い、目に見えるか見えないか位の太さで、絵柄を部分的にかぶせる(トラッピングといいます)ことで白い抜けを回避する方法をとることになりました。この打ち合わせをしたのが、ちょうどクリスマスの夜。中目黒近辺はカップルでいっぱいでした。
カップルだらけの中目黒から会社に帰り、DTPのリーダーと印刷のリーダーを招集して作戦会議です。トラッピングは太すぎると重なりが不自然に見えたり、細すぎると白が出ることを回避できません。会議で方針を以下のように決定しました
(1)ベテランオペレータが、ずれが出る方向を勘案してトラッピングの位置と量を決める。その際には、仕上がりを考慮してトラッピングは必要最低限に抑える。
(2)そのデータをもとに、最後は印刷オペレーションで何とかする。印刷職人の心の声が聞こえます。「何とかしろって、、おい・・・」
(3)印刷における刷る色の順番と印刷の向きを決める。
一度に4色まで印刷することが可能です。トラッピングの効果を最大限発揮するために、どんな色順で刷るのがいいのか、刷り順も綿密に打ち合わせします。また印刷の向きも版ずれや汚れに影響するため、検討を重ねます。

1回目の印刷の1胴から順に刷り順を決めます。

「本番の印刷」

サンコーには2台の印刷機があります。1台はカラーを印刷する4色機、もう1台は、特色をメインで刷っているけれども、カラーも印刷できて反転機能もある4色機。それぞれに得意不得意がありますが、今回はカラーをメインで印刷する4色機で作業することにしました。
刷り順と機械は決まったのですが、まだ乾燥時間の問題が解決していません。紙のカールや伸縮を最小限にするには1回目と2回目の印刷の間隔を短くした方が良いのですが、それは汚れなどのリスクを高めることに繋がります。この相反する2つの条件をクリアできるタイミングを見極めるために、温度、湿度、機械の状態が安定する午前中の少し機械が動いた後のタイミングで1回目の印刷。夜にならない夕方のタイミング、2回目の印刷。と決めました。

通常、印刷は二人ワンセットで作業をしますが、今回はサンコー印刷オペレータの三人(全員で三人です。)総出で作業です。※写真は2名ですがこの場に3人います。

インクを調合→印刷→営業チェックして指示→インク調合→印刷チェックを繰り返して最初の4色を刷了。

インキを練って特色を作っています。

 

4色が刷り終わったところ

そして夜、残りの2色を入れていきます。ここで版ずれが解消できなければ、トラッピングを見直しして版を作り直す可能性もあるので、DTPオペレータも待機させます。やはり多少のずれが出ますが、事前にシミュレーションを繰り返しているので、印刷機の調整の範囲でなんとか収まりそうです

関係者みんなで意見を出し合います

 

その結果、このような形で会社さんに集まるメンバーの一人一人の個性が表現されたポスターカレンダーが出来上がりました。

カレンダー面はこんな感じ

「会社がひとつにまとまる」
今回の経験では、効率よりも「どうやったら任せてよかった。ありがとう!」といっていただけるかを考え、案を出し合いつつも、自分たちが失敗して怒られないような安全策に走るのではなく、クライアントさんのおもいをカタチにするために、敢えて厳しい道のりを選び、それをみんなの力で無事に成し遂げることができました。
某足袋屋が靴づくりに挑戦するドラマ「〇王」がなぜか浮かんでくる・・・・

そして、お任せいただいた、ハンサム株式会社様に改めて感謝いたします。
これからも「おもいをカタチにする仕事」で任せてよかった。ありがとう!と言っていただけるように、社員一同精進していきます。

K.Y

通常、印刷は二人ワンセットで作業をしますが、今回はサンコー印刷オペレータの三人(全員で三人です。)総出で作業です。※写真は2名ですがこの場に3人います

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