デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.06日本大学理工学部建築学科の学科紹介パンフレットが仕上がりました。シルバーの表面に円が並ぶ軽やかな色彩のパンフレット。パンフレットのタイトルは「建築はつづく。未来がはじまる。」シルバーの地色に開けられた鮮やかな円が未来の景色を見せる窓のようです。
シルバーの輝きと鮮やかな色彩が特徴的なこのパンフレットが完成するまで、様々な技術的課題を乗り越える必要がありました。
地色のシルバーはプロセスカラーではグレーになってしまうため、特色のシルバーインキを使います。オフセット印刷ではインキの油と水が反発しあう特性を使って、平らな版で印刷する部分としない部分を区分します。しかしシルバーインキは水分が付いている本来インキが乗るべきではない部分にも乗ってしまうことがあります。そのために印刷中は目視による確認が必要です。
シルバーインキの上にはインキが乗りづらいため、シルバーを最後に印刷することが多いです。しかし今回はスミ文字が多いため、シルバーを先に印刷し、スミはインキ量を多めにして印刷しました。
シルバーの面積が広めな当パンフレット。色が沈みグレーな印象にならないようカラーの部分との兼ね合いが重要です。そこでカラー部分をRGBのような鮮やかな表現が可能なカレイドインキを使って印刷しています。
左側の缶がカレイドインキ。缶に入っているとCMYKよりも深い色味なのですが、印刷するととても鮮やかな色味になります。CMYKのカラーチャートの色と比較してみました。四角く囲まれた色は通常のCMYKで印刷されたカラーチャートです。
桃色部分(M50) CMYKのM50の色は薄桃色といった印象。 カレイドの方は 色が明るいだけでなく鮮明な桃色。 |
朱色部分(M70 Y70) CMYKの色味は黄色味が強い色ですが、 カレイドの方は赤みが あっさりとしていて朱肉のような赤。 |
紫色部分(C35 M50) 桃色と同じく紫色も鮮明。 |
黄色部分(M20 Y100) CMYKより少しオレンジがかった黄色。 |
緑色部分(C80 Y80) 少し明るめ。 |
青色部分(C75 M30) 渋く重厚な仕上がり。 |
マゼンタの発色が特に強めに仕上がるインキのようです。
さて、今回のパンフレットの特徴はインキだけではありません。シルバーの背景に多数の円が並んでいるレイアウトは見当を合わせるのが難しいです。特に今回シルバーを印刷し乾燥させてから、カレイドインキで円部分を印刷するため、紙が収縮しており見当が合いづらくなります。そこで、文字入れをする円部分のデータを0.15pt太らせて重ねることで印刷時のズレを目立たなくする対策を講じました。印刷中の微調整も入念におこないました。
カレイドインキとシルバーインキの特性を理解し、刷り順や見当ずれの対策を行うことで、プロセスカラーでは表現できない未来を感じるより鮮やかなパンフレットができあがりました。
デザイン:三上悠里様(株式会社QANDO)
制作:株式会社サンコー
カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
毎週火曜日の夜8時から。紙のこと、デザインのこと、印刷のことについて、 ゆるゆると語る30分。
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