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なぜネット印刷はあんなに安いのか? | 紙と印刷とラジオ 第153回

公開日 2023.09.20   更新日 2023.09.26

ネット印刷はとにかく価格が安いことが特徴です。例えばA4サイズのチラシを両面カラー印刷で90キロのコート紙に印刷する場合、プリントパックさんなら6営業日後の納品にすると500部で2528円(送料込み)です。この印刷物をサンコーを含め一般の印刷会社で印刷したら、50,000円程度の金額になってしまいます。同じ紙で同じ印刷をしているのになぜこれだけの違いが出てきてしまうのか?今夜のラジオはそんなサンコーの首を絞めるような話題について語りました。

違いその1 web専業の印刷会社こそのメリット

ネット印刷は営業マンが居なかったり、クレジットカード決済のみにすることで経理業務を簡素化したりと、web専業であることでのコストメリットがあります。

違いその2 規模の経済性故のメリット

プリントパックさんやグラフィックさんは、企業規模がかなり大きいため、紙の仕入れ代金や配送コストについてスケールメリットが効いていることが考えられます。

一般的な印刷会社のコスト構造

上記2つの理由だけでは10倍近い価格差の説明にはなりません。ではその理由を考えるために、一般的な印刷会社の価格である50,000円を項目ごとに分解してみます。会社さんによって多少の違いはあると思いますが、ザックリいうとこんな感じです。
DTP 5,000円(データチェックして面付けするコスト)
版代 20,000円(4色×裏表=8版出力するコスト)
刷り代 20,000円(色出しして本刷りするコスト)
紙代 3,000円(全判250枚梱包なので半裁で500枚。2000枚仕上がり相当が最低梱包)
断裁、梱包、発送など 2,000円
このうち、DTP代、版代の25,000円は固定費。刷り代も数千枚までは固定費なので、50,000円のうち45,000円は固定費です。紙代も仕上がり2000枚までは固定費だから、それを考えると50,000円のうち48,000円までは枚数が変化しても金額は変わりません。だから小ロットだとコストが高くなってしまうのがオフセット印刷の特徴でした。
高い固定費を多くの顧客で分割してしまうというイノベーション
固定費が高いからロットが小さいと価格が高くなってしまいオフセット印刷に手が出せない。その問題に対して、固定費を分割してしまったのがネット印刷の凄いところです。他社の原稿を1つの印刷物に面付けしてしまうという方法で劇的にコストを下げることを実現しました。全判の印刷機を使うことで固定費である合計48,000円を8社で分割すれば、コストは圧倒的に下がります。あとはスケールメリットや価格政策などで埋められる範囲でしょう。
※厳密にいえば固定費が半裁と全判で異なりますが、話しを簡単にするために無視してます。

このモデルで効率を高めるには枚数を揃えたい

8社のチラシを1枚の版に面付けすることで、コストが下がる。このモデルでは8枚の印刷枚数が同じであればより効率が上がります。だから納品日まで日数が長くなれば安くなるようにして、同じ枚数の印刷物を集めて印刷することで無駄が生まれないようにしています。

どんな風に使い分けしたらいいのか?

各社の原稿を1つの版に面付けすることは、コストは劇的に下がりますが、一方で8社の印刷物全体を良い感じに仕上げる必要があるので、1社だけのために微調整はできません。そうなるとリピートがある印刷物で、前回と色を合わせるのは苦手です。その分価格の圧倒的な安さを活かして、今までオフセット印刷を諦めていたシーンでも印刷物を作れるのがネット印刷の魅力と言えます。

ラジオが終わる?

毎週お送りしてきた紙と印刷とラジオを、10月4日の放送でいったん終了させる事を発表しました。その理由について、パーソナリティの二人はこう語ります。

ラジオが始まった経緯

20年にペーパーボイス東京でサンコーの印刷技術についての展示を予定していましたが、コロナで中止に。平和紙業さんもサンコーも、イベントを通じてデザイナーさんに向けた発信をしていましたが、それが長期間にわたり実施できない状況になりました。そこでコロナでオンラインのコミュニケーションが伸びると予測し、音声メディアであるインターネットラジオを始め、放送回数は150回を超えました。毎回100名の方が聞いて下さったとして、延べ15,000人もの人が聴いてくれたことに感謝しています。

紙・印刷にまつわる市場の変化

この3年間、紙の役割がメディアからマテリアルに変わると考え、マテリアルとしての魅力を引き出すための技術の話しやゲストトークをやってきました。いつも私たち自身にとっても学びになるような内容が沢山アーカイブできたと思っています。
一方で、世の中はメディアからマテリアルの先に進んでしまったように感じています。製紙工場は減産、品番の減少によるコスト削減を進め、印刷機はより効率性を追求する方向にシフト。デジタルが進むからこそ、アナログの価値を高めて行きたいのですが、そのためのコストをサプライヤーが負担できない状況になりつつあるように思っています。
そのような状況に対して、私たちはメディアからマテリアルのもう一歩先を見つめ、行動しなければいけない。そんな風に考えるようになりました。デジタル化による市場規模の縮小が顧客サイドで起きた結果、メーカーサイドの事業縮小につながり、それが顧客サイドの市場規模縮小を加速する。そのようなループに入りかねない状況で、自分たちが提供できる価値は何なのか?それを改めて考え、そのための発信に切り替えていきたい。だから一度ラジオを中止して次のやるべきことを考えたいと思っています。

この先は未確定・・・

まだどのようなカタチで活動するかは正直見えていません。オンラインなのか、リアルなのか何かの形で活動が再スタートした時には、皆さんにまたお会いしたいです。それまでは、150回を超えるアーカイブが全て閲覧可能な状態になっているので、ぜひ聞き逃した回を楽しんで欲しいし、多くの方に広めて頂けると嬉しいです。
残り2回の放送では、各パーソナリティが感じているテーマについて、30分の時間制限も気にせず喋ってみたいと思います。皆さんのご意見もコメントでぜひお寄せください。

紙と印刷とラジオ第153回パーソナリティの二人今日もなぜか笑顔の二人です

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