デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.06この数年、エコロジー、SDGs、サステナブルといった視点から、工場やお店などから出る廃棄物を紙の原料にする混抄紙への問い合わせが増えてきているそうです。ということで、パルプ以外の何かを漉きこんだ混抄紙について語りました。
一般的な紙は木材から作られたパルプを原料としていますが、それ以外の何かを混ぜ込んだ紙が混抄紙です。ういろうや、化粧品ブランドの使用済み什器や、大阪の間伐材、洋服などのは材、折り鶴、お茶、竹紙など様々な製品が市場には存在します。
繊維状のものでなければパルプとうまく絡まないので紙になりません。お茶の葉や小豆かす、麦芽かすなどの実績がありますがどれも繊維状という特徴があります。衣類の生地(ぼろ)も繊維質なので紙にすることができきます。洋服の青山の使用済みのスーツから洋服の青山のショッパーや封筒などの紙を作ったこともあるそうです。
お米の粉末、塩、などを使った混抄のご相談が平和紙業さんにあったようですが、パルプ繊維と絡みにくいと紙として脆かったり、粉末状のものは水に溶けてしまうなどでやはり向かなかったりします。
乾燥していない原材料を一定期間保管すると、腐ったりカビが生えるので、乾燥されたもの、もしくは抄造のタイミングに合わせて原料を工場に入れられるもの。というのも混抄紙にできる条件となります。また、紙は匂いを吸収するので、ものすごく匂いの強いものや、刺激の強いものは、繊維状で乾燥していても入れられない場合があります。具体的には唐辛子などの香辛料などは難しいようです。
廃材を有効活用でき、ブランドメッセージとしても非常に有効な混抄紙ですが、実現したケースは多くありません。実現に向けた障害を掘り下げてみました。
一般的に小ロット対応の紙のメーカーで生産しても最低ロットとしては5トン程度は必要です。200キロの厚めの全版の紙で25,000枚が5トンです。ういろペーパーや大阪の森の間伐紙を作られた山陽製紙さんは更に小ロットで対応できたり、和紙メーカーであれば数百キロからでも作れますが、1枚にした時の単価は非常に高くなってしまいます。お店単位、小さな会社単位だとなかなか高いハードルです。さらに、印刷や加工に適した特性を持たせようとするとハードルがあがります。紙を作る(入り口)よりも、仕上がった紙をどのように消費するか(出口)がきちっと定まっている必要があります。
ういろペーパーは山陽製紙さんの努力で混抄率が20%という割合ですが、印刷加工適正などのことを考えると、一般的には10%の混抄率でもハードルが高いそうです。廃棄物の量が何百キロ、何トンのボリュームとなると根本的な解決に至らないことも多いと言います。
混抄紙を作ること自体のコストアップはそこまで大きく無いといいます。しかし、製紙工場や和紙工場にオリジナルで紙をオーダーすることになるため、一般紙に比べてどうしても数倍のコストになってしまいます。そのため、混抄紙のコストを資材費として捉えると、まず価格が合わないでしょう。大切なのは、その紙を用いた商品が企業や店舗のビジョンを示しているか、それによりお客様とコミュニケーションがとれ、更に宣伝に上手く繋げられるか、といった経営理念と直結しているかどうか。それが大切です。とはいえ、まずは西谷さんにご相談ください。というオチがついたところで混抄紙についてのトークは終了。
カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
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