トップ ゲストトーク 宮後優子さんの編集と出版の視点 | 紙と印刷とラジオ 第17回

ゲストトーク 宮後優子さんの編集と出版の視点 | 紙と印刷とラジオ 第17回

公開日 2020.11.11   更新日 2023.06.30

もう11月に入りました。そろそろ繁忙期に差し掛かります。年末に向けて印刷は忙しくなります。紙屋さんも11/20あたりからクリスマスまではデザイナーさんが追い込みに入り、なかなか会えなくなるそうです。西谷さん、いつになく低い挨拶ですね。今日はどことなく硬い西谷さんのところに冬の知らせに合わせて今回のゲスト、Book&Design代表の宮後優子さんがいらしています。

宮後さんと編集者の仕事

宮後さんは大学を卒業後出版社で編集者としてデザインの専門誌の編集に携わり、編集長も経験。文字デザイン専門誌「タイポグラフィ」などデザインの編集取材に携わってきました。元々は新卒で美術の出版の仕事を探していましたが募集しておらず、総合出版、コンピューター系の出版、3社目にして美術出版に入社し、合わせて27年間出版社の編集者として仕事をしています。27年間のうち13年半は雑誌編集者、後半は書籍編集者のして働いている宮後さん、雑誌編集者はチームで雑誌の企画を練って行きますが、書籍編集者は一人で一冊の本を仕上げる仕事で動き方が全く違かったそうです。編集の仕事は皿回しのように複数のスケジュールや声かけを同時進行で行える人が向いているそうです。2018年に浅草で個人出版社、ギャラリーのBook&Designを設立。多くの書籍を担当しながら2020年4月には「美しい本の文化史」を発売されています。2010年から青山ブックセンターでタイポグラフィのイベントも企画運営されています。

ひとり出版社とは何か

書店営業や経理など、編集の仕事以外の作業を別の部署が進行する会社内にある出版社とは違い、本を売り出すまでの全ての工程を1人で行うのがひとり出版者です。取扱い部数が多い書籍は出版社で本を出す方が市場のスケールも大きくてよいですが、アートやデザインの書籍など部数が元々少ないものは一人で出版するくらいの数しか流通しないためひとり出版社が適しているそう。売り出す書籍の内容を客観的に吟味してストップをかけたり部数を別の目で調整してくれる人がいないので売れないものを作ってしまった場合は自分自身が全て背負うことになるのがデメリットですが、本の内容に応じて仕様を変更しやすいことがひとり出版者の特徴で、印刷会社に入稿をお願いするときも強みの印刷や揃っている印刷機を把握しながら声をかける会社を選ぶことができます。只今宮後さんは「ひとり出版社の作り方」というデザイナー、著者、翻訳者、編集者など自分でコンテンツを作れるクリエイター対象のセミナーを開催し、自分で出版してみたい方に向けてひとり出版者のはじめ方を教えています。

11月21日からBook&Designのギャラリーにて松田行正さんセレクトの戸田勉さんのブックデザインの展示を開催しますのでぜひお立ち寄りください。

本が売れなくなってきている今、兼業をしながらひとり出版社を行い、作者の希望をかなえた質の高い本や印刷物を出版するという傾向は高まって行きそうですね。

 

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