デザインのひきだし50に掲載されました!
2023.10.06毎月一度お届けしているゲスト回。132回目のゲストはペーパーボイス東京でpaper-hat展を開催中の素材研究設計所『paper-hat』のお二人にお越しいただきました。
2021年3月に東京藝大で建築意匠を学ぶ蓮溪芳仁さんと東京大学で建築構造を学んぶ下田悠太さん。2 名の学生によって発足した素材研究設計所がpaper-hatです。「素材」の研究からモノの特質を発見し「身体」と関わり合うモノのデザインをされています。
彼らが最初に手掛けたのが「紙」を用いて「帽子」をつくること。その最中で平和紙業の西谷さん(こと紙谷 刷太郎)と出会い、今回のpeper-hat展開催となりました。
東大、芸大、東工大の3校が合同で実施している卒業制作の設計競技で二人は出会います。お互い顔は見たことはある程度だったのが、顔合わせで数分話しただけでお互いめちゃくちゃ面白いと惹かれ合ったそうです。蓮渓さんが「いつかオリジナルの作品を紙で作りたい」というおもいを持っていて、構造に詳しい下田さんと組むことで実現できると確信し、一緒に活動を始めたそうです。その活動の一区切りが今回のpaper-hat展だといいます。
当初はバルカナイズドファイバーという紙を使った帽子を作っていた二人。西谷さんと出会い素材としての紙の特性を理解することで、様々な実験のアイディアが広がり、その実験を経て貝印が主催する帽子のデザインコンペへ出店する作品が出来るまでのプロセスが展示されています。
完成までのプロセスを展示をするアプローチはとても建築的だと蓮渓さんは言います。建築という学問は、完成までの時間がとても長いため、完成した結果と同じくらい過程を大切にするそうです。紙との時間軸の違いを感じます。
下田さんによると、折り目をつけて形を変えたり、切ったり貼ったりも簡単にできることができるのが紙の良さだそう。確かに、金属や木材だと紙のように簡単には加工できませんし、布だと形が維持されません。さらに素材として唯一無二の存在で様々なバリエーションを簡単に作れることが魅力だと言います。
蓮渓さんによると、建築では紙を使った模型を設計の段階で使うことから。考える過程と紙は親和性が高いのではないか。簡単に加工できるという素材としての特徴から、もやもやしたアイディアを立体であってもすぐにカタチにすることができる。印刷物は紙が完成物ですが、アイディアをカタチにするプロセスでこそ、紙はその特異な素材性を発揮できるで。そんな目から鱗な視点がたくさん出てきました。
印刷業界にいると年々市場が縮小し、未来を悲観しがちです。しかし、peper-hatのお二人から素材としての面白さ、紙にしかできない可能性をたくさん見せてもらい元気を貰えました。そして紙や印刷のプロとして、彼らのように紙を使った表現したい人を応援していきたい。そう思いました。
カラー写真を全て蛍光色に置き換えたり、4色機で一気に12色印刷してみたり・・・。印刷職人ですら予測出来ない事を実験しています。
毎週火曜日の夜8時から。紙のこと、デザインのこと、印刷のことについて、 ゆるゆると語る30分。
03-5534-5731
(お気軽にお問い合わせください|平日 10:00~18:00)