トップ世界に1冊しかない手帳の完成を目指して(後半)

世界に1冊しかない手帳の完成を目指して(後半)

2017.08.24

ネットで手帳を自由にレイアウト・構成・注文できるネットde手帳工房の『ワタシメイド手帳』は、先日の記者会見でお披露目し、いよいよ9月4日から正式なオーダーが開始されます。

それに先立って、製造を担当するサンコーと篠原紙工の2社の、担当者が集まった現場ミーティングが開催されました。サンコー・篠原紙工それぞれ7名ずつ。合計14名が参加したのですが、夫々の会社の社員数は20名前後。そこから7名が参加するのですから、2社の中小企業にとってはかなり大掛かりな会議です。

先日公開したサンコーでの見学風景はこちら

大断ち

ワタシメイド手帳はA5サイズの手帳です。しかし、オンデマンド印刷では生産性を高めるためにA3ノビと呼ばれるA3よりも若干大きなサイズに、4冊分をまとめて印刷します。それをまずは4冊に断裁する作業から開始します。

断裁の前に、員数機にかけて枚数をチェックします。オンデマンド印刷の段階で200ページ(100枚)の印刷ごとに、1枚の間紙を挟み込みます。その紙の束を員数機に掛け、101枚ごとに付箋を挟み込んでいきます。紫色の間紙の上に付箋が挟み込まれていたら、その下は200ページ(100枚)がちゃんとあることが確認できます。これによって、印刷で2枚の紙が一緒に入ってしまった。などのトラブルを、製本前に事前に発見することができます。

これが員数機。機械が到底人間では数えられないスピードで紙を数えていきます。 紫色の間紙の上に、付箋が乗った状態。

員数機によるチェックが終わったらいよいよ1回目の断裁です。製本が終わった後の「仕上げ断裁」と対比して、1回目の断裁は「大断ち」と呼ばれます。

まずは、紙を揃え、空気を抜いて紙を塊にします。そして断裁します。 大断ちが終わったところ。背表紙側(業界用語ではノドと言います)以外は、仕上げ寸法よりも大きめに断裁されています。

PUR製本

書きやすくするために、手帳製本ではしっかりとページが開くことが求められます。そのため、市販される手帳では、より強度が高められる「糸かがり」と呼ばれる糸で縫った製本が一般的です。しかし、ワタシメイド手帳では、糸かがりに近い開きを実現でき、より小ロットでの生産に適した、PUR(ポリウレタンリアクティブ)製本を採用しています。PUR製本はノリ綴じの一種で、背表紙側に糊付けを行い、本文と表紙を結合させます。

PUR製本で使う製本糊は、空気中の湿度を吸い込んで固まる性質を持っています。そのため長時間の作業になると、糊がだんだんと硬くなってしまい、不良が発生する原因となってしまいます。製本工程で不良が出た場合、通常は印刷予備の中から製本をします。しかし、ワタシメイド手帳では、各印刷物は1部ずつしかなく、予備はありません。製本段階での不良は、印刷工程からのやり直しが必要となるため、どうやったら製本段階での不良発生を減らすことができるか。意見交換を行います。

仕上げ断裁

PUR製本が終わって、糊が乾いたら仕上げ断裁を行います。本の上下(業界用語では「天地」といいます)・本の背表紙の反対側(同じく「小口」といいます)の3方向を断裁します。この工程では、表紙が既に糊付けされています。その表紙に傷がつかないように、厚紙を同じ大きさにカットして、上下に挟んで断裁します。

小口部分を断裁します。手前上に見えるのが断裁の包丁です。

天地を断裁するときには、こんな形で厚紙を二段階で積み上げます。これは、断裁前には紙がずれない様に強い力で紙を押さえるのですが、その力が背表紙の部分に掛かってしまうと、背表紙にしわが寄ってしまいます。それを避けるために、別の紙でこのように段差を作り、背表紙部分にプレスの力が加わらないようにするのです。う~ん、細かな気遣い。

そして、何より驚きなのが、通常の断裁は一度で目的の場所を切り落とします。しかし、篠原紙工さんでは、目的の場所の数ミリ前で一度断裁し、さらに二度目で目的の場所を断裁するという「二度切り」を行っています。

これにより手間は2倍かかるのですが、篠原社長によると、いきなり目標の場所を切ろうとすると、断裁時に紙が引っ張られ、断裁後の紙の角部分が微妙にほつれてしまう。とのこと。それを避けるために、手間のかかる二度切りを徹底しているそうです。お客様の手に渡ってしまえば、表紙の端なんて1日使っただけで折れ曲がってしまうかもしれません。でも、「最高の状態でお届けしたい。」という職人のこだわりが詰まった作業です。

各冊子の角はきれいに切られています。

意見交換会

工場見学が終わり、2社にスタッフ全員で意見交換会です。もし製本段階で失敗(業界用語で「ヤレ」と呼びます)が出た場合に、その手帳が「どなたから発注頂いたものなのか」をどうやって特定し、どんなタイミングでサンコーが再印刷し、篠原紙工さんで再製本するか。そのときに発送日程に影響はどの程度でるのか。2社間での作業伝票の流れをどう作ったら、効率が良いか。そんなことをディスカッションしました。普段はあまり外部と接することのない経理部門が、思わぬトラブルの種に気づいてくれたりして、意見交換は予定時間を超えて続きました。

いま、webサイトでは、ビッグデータに基づき、一人一人に表示される内容が異なるのが当たり前になっています。オンデマンド印刷機の発展とともに、紙の世界でも一人一人に違う印刷物が届く。そんなことが当たり前の時代が、すぐそこまで来ているように思っています。

そんな時代を見据えながら、印刷業界の中にある当たり前をすべて疑ってみた時、今まで思いもつかなかったような新しい作業方法がたくさん出てきました。一つ一つは小さい気づきかもしれませんが、全てが1つになった時に、すごく大きなイノベーションを生み出すことに繋がりそう。そんなことが感じられるミーティングでした。

 

Y.A.

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